インドネシア コーヒー農家の現状


2012.10.04

ジャワ海というとイメージは澄んだ南国の海と思われる方も多いと思います。

 

特にバリ島に観光旅行に行かれた方は、この海に対し最大の賛辞を送ります。ジャワ島は東西に長い島で、北側がジャワ海に当たります。車で何度かPati~バンドゥンを往復すると、ジャワ海を見る機会があります。

 

また、JeparaやJuwanaといったジャワ海に面した街にもよく行きますので、ジャワ海は比較的なじみがあるのですが、私が見たジャワ海は「茶色い海」です。とても「燦々と照りつける太陽がきらきらと海面で乱反射している」といった光景は見たことがありません。

 

ただし、漁場としてはかなり優良でこの濁った海で取れる魚は美味です。以前日系の漁業関係者と話したことがあるのですが、海が茶色いから魚がいないとか、まずいとかいうことはないとのことでした。

 

ところで、昨日の話の続きで、Patiから一番近いJollong村のコーヒー農家の話を今日のブログでしたいと思います。

 

中部ジャワ州にはいくつか山があります。ほとんどの山がジャワ島中部、つまり馬の背のように存在し、ジャワ海に面している山は北東部にあるMuria山のみです。州都のスマランからさらに北東に位置するこの山のふもとに、Patiをはじめ、Kudus、Jeparaといった中堅都市が存在します。

 

この山ではコーヒーの栽培が盛んです。ご存じの通りオランダが強制栽培によりインドネシアでコーヒー栽培が発展してきました。おそらくほとんどの方が「コーヒー栽培」ときいてイメージするのは、だだっ広い土地に見渡す限りコーヒーの木があり、朝早く労働者がその土地に集まり、夕方解散する。といったものではないかと思います。

 

実際にそういった「コーヒー農園」というものはインドネシアでも存在します。ところがMuria山では各個人が山に自分の土地を持っており、そこで先祖代々からのコーヒー栽培を受け継いできます。

 

コーヒーのビジネスに携わらない方がこの山に入ると、ただの雑木林にしか見えないでしょう。ところが一見雑木林にしか見えないこの山に無数にコーヒーの木が植えてあるのです。もちろん「この場所は○○家の所有する場所」、「あの場所は△△氏の所有する場所」といった目に見えない境界線ははっきりと存在します。

 

コーヒーの収穫期は4月~11月くらいです。この時期以外でも収穫はされますが、極めて量が少なくなります。

 

それではこのMuria山のコーヒーが、どのようにして市場に出てくるかを簡単に説明いたします。

 

まず各コーヒー農家によって収穫されたコーヒーの赤い実は、買い付け人によって各農家から買い付けされます。毎年決まった担当者がバイクでやってきて赤い実を収集します。

 

その後この買い付け人は、山の頂上にあるコーヒーの精製工場に赤い実を販売します。コーヒーの精製とはつまり、赤い実の中に入っているグリーンビーンを取り出す工程のことで、大量のコーヒーの赤い実が処理され、グリーンビーンとして得られます。コーヒー基本構造につきましてはこちらのブログに記載しましたので、興味がおありになる方はご参照いただければと思います。

 

そしてこの工場の中で良い豆、不良豆を選別する工程を経て山から都市へと運ばれます。

 

ここまでの産業構造はすべて山の中で完結しておりますので、基本的にここに関係する人は山の中の住人になります。また、聞いた話によると、この精製工場は国営であるとのことでした。

 

さてここで一つの問題があります。それはこの買い付け人とコーヒー農家との関係です。毎年決まった買い付け人がJollongの村に来て言うことは一つ、「今年はキロ当たり○○ルピアで買います」。

 

つまりどういうことかというと、価格の交渉は一切農家としないわけです。当然買い付け人も国営精製工場から値段を指定されているはずなのですが、農家としては買い付け人の言われた値段で売るしか道はないのです。

 

例えば一人の農家が買い付け人の値段が不服でどこか売り先を見つけようとしたとしても、長い年月を生産者として過ごしてきた彼らにとって、売り先を見つけるのは容易ではありません。とくに国内でもメジャーなコーヒーメーカーはいくつかあるのですが、いきなりそういったメーカーに直談判したとしても、既にメーカーにも強固な仕入れ先が存在し、今までの商習慣を崩したくない為、新しい仕入れ先を開拓しようとは思わないでしょう。

 

ましてや一人の農家が収穫できる豆はたかが知れています。そのため大手のコーヒーメーカーもあえて個別の農家から購入するような面倒なことはしないでしょう。

 

極端な話をすると、彼らの生活はこの買い付け人の値段によって一生決まってくるわけです。

 

ある人は思うかもしれません。「コーヒーの需要は海外にも当然あるので、村人が協力し合って輸出すればいいのではないか?」と。

 

その通りです。

 

しかしそれには容易に超えることが出来ないハードルがあります。それが「コーヒー輸出ライセンス」の問題です。

 

次回もう少しコーヒーのビジネスに関して記載したいと思います。

 

                       

この山の向こう側にジャワ海が広がります。

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Smapi Jumpa Lagi,[full][/full]

Koki