インドネシア 貿易の歴史2


2012.11.05

今日の日経新聞で、インドネシアの西ジャワ州ブカシで賃上げデモが頻繁に行われているという記事を目にしました。

 

Patiの街中でも以前私は一度見たことがあります。おおよそ100人に満たないくらいの人々が何事かを言いながら中央広場(インドネシア語でAlun-Alun)に近い道路を練り歩くといったものだったのですが、道路のわきにはいつもの通り、食べ物やココナツジュースのWarung(屋台)が出ており、デモ隊の人々も、疲れたらめいめいWarungで飲食をし、道端に腰かけるといったのどかなものでした。

 

警官隊もかなり多く出動していたのですが、緊張感は全く感じられず、適当に交通整理をこなしつつ、装甲車の警官と一般市民が談笑する光景も見受けられます。

 

インドネシア語ではデモのことを”Unjuk Rasa”といい、中部ジャワの現地新聞Jawa Posでもしばしばこの単語を目にします。つまりいろいろなところでこういったデモは発生しているわけなのですが、昔は深刻なものの場合は「断食デモ」になることもあったということです。

 

「断食デモ」とはつまり、デモの対象者がデモ隊の要求を聞き入れなければ、食事をしないというもので、実際にこういったデモで餓死者も出たことがあると聞いたことがあります。

 

今回新聞に取り上げられていたデモは「賃上げ」でしたが、例えば先般Jawa Posの記事で見たのは「砂糖の輸入量を減らせ」というものでした。もともとインドネシアは砂糖の生産地でもあるのですが、輸入品の砂糖が安価に大量に市場に流れているため、砂糖生産者が価格を下げざるを得ず、デモを起こしたというものです。

 

ところで、コーヒーに関してもデモが発生したことがあります。今から4年くらい前の出来事のようです。このデモはスマトラ島のある地域で発生し、島内のコーヒー農家に広がりデモというよりも暴動に近い騒ぎになったようです。

 

コーヒーでデモ??と思われるかもしれませんが、インドネシアのコーヒー業界というのは非常に閉鎖的な業界で、一筋縄ではいきません。以前この章でお話しした通り、2010年の法改正前までは事実上AEKI(Asosiasi Eksportir Kopi Indonesia=インドネシアコーヒー輸出協会)に加入していないとコーヒーの輸出は出来ませんでした。

 

ではAEKIに加入すればよいではないか?ということになるのですが、AEKIに加入したい旨を話しても「前年度の輸出実績が、10t(確かですが)以上あることを証明する書類を提示してください」とのこと。

 

輸出したいから加入したいのに「輸出の実績を示せとは何事??」という対応なのですが、つまり既得権でがんじがらめになっており、事実上、新規の参入が認められていなかったわけです。

 

スマトラのコーヒー農家としては輸出で販路を広げるチャンスがあるにもかかわらず、規制がかかって輸出が出来ないことにより憤慨し、デモ、暴動という騒ぎになりました。

 

LJAがコピルアックを購入しているMuria山でも、Patiの近所のコーヒー産地のJollongでも同じ状況です。販路を広げるチャンスがあったとしても、結局は古くから出入りしている仲買人の言い値で売るしか方法が無いのです。

 

これはひょっとして200年以上前のしがらみのようなものが、最近まで生きていたのか?と本当に勘ぐりたくなります。

 

LJAインドネシアがコーヒー輸出のライセンスを取得してから、少量ではありますがMuia山のコーヒー豆を弊社経由で輸出する実績が出てまいりました。「Muriaの豆を購入したいがどうやって購入したらいいのかよくわからない」という海外のお客様からの引き合いもあります。

 

いずれにしてもMuriaのコーヒー農家からしてみれば、今までは仲買人が言う価格以外での買い取りは「不可」だったのですが、「自分たちが決めた価格」をもとに弊社と交渉が出来るので、彼らとしても大いにメリットがあるわけです。

 

最終的にインドネシア政府はコーヒーの輸出を「AEKI加入は必須」という条件を取り除き、一般にもコーヒー輸出の市場を開放したのですが、いまだこの新法律を利用して輸出するケースというのは少ないと聞いています。

 

将来この法律を利用して、インドネシアのコーヒー豆がますます国際市場に出てくるようになれば素晴らしいと思う次第です。

 

次回はインドネシアのコーヒーで有名なKopi Luwak(コピルアック)について、貿易の歴史という観点から記載したいと思います。

 

 

                       

Muriaのコーヒー農園です。農園というと、見渡す限りのコーヒー畑というイメージがありますが、山の森ほぼ全域にコーヒーの木が植えてあります。

 

Samapi Jumpa Lagi,[full][/full]

Koki